太陽光発電を考える会

町長選候補者への公開質問

富士見町の太陽光発電を考える

 トラブル事例


「帰去来荘」跡地(旧小川別荘)に予定されているメガソーラー。土砂災害特別警戒区域を含む急傾斜地の上部にあり、盛り土による一時貯水は土砂災害の危険性が高い。静かな住宅地は、既存の塚平メガソーラーとで囲まれてしまう。

 

 明大跡地に計画中のメガソーラー。
貴重な水源である大泉、小泉の上流にあり、水質への影響が懸念される。一帯は土石流危険区域、土砂災害警戒区域内にあり、土砂災害が起こり得る危険な地形である。近くにはロケの聖地とも言われた中学林に、住民の反対も虚しくメガソーラーが建設された。

太陽光発電で絶滅してしまう帰去来荘のヤマユリの群落。かつてはどこでもあったヤマユリも、乱獲により絶滅の危機に瀕しており、県の希少植物に指定され保護されている。事業者は形だけの移植で済まそうとしている。
7月24日頃から見頃を迎えます。 ヤマユリ最後の自生地

昔から高森地区の生活と農業を支えてきた大泉水源。ここの水と森は、大切に残していかなければならない富士見町の宝である。この美しい森の上流に、ソーラーパネルを敷き詰めることは、環境保全の観点からも許されない。

地域防災の専門家も危険性を指摘

山梨大学工学部 土木環境工学科 鈴木猛康教授
 
 計画地(旧小川別荘)の東は、がけの高さ、傾斜より、全ては急傾斜地崩壊危険箇所に分類される斜面です。土砂災害警戒区域、ならびに土砂災害特別警戒区域に指定されているのは、その下流に住宅がある箇所からであり、どの斜面も崖崩れが非常に起こりやすい、ということです。開発が行われると、土地の保水能力が大幅に低下し、危険ながけの斜面へと雨水が浸透して早期に供給され、土砂災害警戒区域、特別警戒区域でのがけ崩れの発生を助長します。
 
 富士見町太陽光発電設備の設置及び維持管理に関する条例では、第5条で土砂災害防止法における土砂災害特別警戒区域への設備設置を禁止していますが、土砂災害特別警戒区域のさらに上にはげ山を作り、保水能力を 低下させることは、土砂災害特別警戒区域のがけ崩れ発生リスクを高めることになりますので、土砂災害特別警戒区域への設備設置と同じ行為と判断します。
 
 したがって、歴史的にも、環境面でも貴重な当該地で、土地の造成、太陽光発電施設の設置を行うことには賛成できません。

公開質問状

町長選挙 候補者様                            
2021年7月24日
太陽光発電を考える会
事務局 渡辺裕成、御子柴啓明
 
 太陽光発電は、地球温暖化を防ぐための大切なエネルギー源です。その一方で、災害発生の危険性や景観・生活環境への影響により住民の安全・安心な生活を脅かし、トラブルの原因にもなっています。 
 
 トラブル事例の一部を列挙します。 
(1)境メガソーラーでは、上水道取水施設である大泉、小泉の上流に事業が計画されました。水源への影響に無知な事業者は、関係区の区決議により撤退させられました。撤退後の明大跡地は転売され、新たな太陽光発電が計画されています。 
(2)境小前では、森を天然更新するという嘘の理由で伐採した上で、太陽光発電を住民に提案しました。町から5年間の勧告処分を受けています。
 これらの経験が町の条例の制定に結びつきました。
(3)高原ミュージアムで「帰去来荘」の由来が常設で説明されています。その跡地(旧小川別荘)が外国資本の手に渡り、太陽光発電が計画されました。近隣の土砂崩れによる死者を出した急斜面の危険性が指摘されると、その度に事業者は計画を変更する杜撰さで、未だに確定した事業説明が住民に行われていません。3778筆の反対署名、関係3区が全て反対決議をしたにもかかわらず、現在も係争中です。 
 
 現町政は、周辺住民と関係区が反対を決議しても、「法令や規則を満たせば許可せざるを得ない」と回答しています。法令や規則などの要件を満たすのは当然のことで、それだけではどんな太陽光発電も許されてしまいます。住民の「安全・安心で豊かで平和な暮らしをする権利」は無いのも同然です。
 単なる規則の上に、町の太陽光条例では、周辺住民と関係区の「理解」と「環境権や生存権」を大切にして、それが尊重されることを条件に、町長に許認可権を認めているのです。太陽光条例は、民主主義の根幹である住民の理解と判断を尊重することを宣言したものです。 
 
公開質問
 
(1)反対署名、区決議の重みと役割をどのようにお考えになりますか。
(2)太陽光発電計画に住民が反対するとき、開発をストップさせる方策を住民と共に探
   るお考えはありますか。
(3)トラブルを未然に防ぐために、太陽光発電の規制強化、条例の改訂を早急に進める
   お考えはありますか。
(4)環境に配慮した再生可能エネルギーを推進する具体的政策をお持ちですか。

 

名取重治候補の回答

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(1)反対署名、区決議の重みと役割について 

 署名を集められた呼びかけ人の方々の熱意、署名をなさったみなさんのお気持ちは重く受け止めさせていただきました。また近隣の関係区意見の結果も承知しております。
 本計画は現在許可申請前の段階であり、今後申請書が提出された場合は、反対される署名、区の決議を重く受け止め、条例の基準に従い、慎重に対応していきたいと考えています。 
 

(2)太陽光発電計画に住民が反対するとき、開発をストップさせる方策について

 「住民が反対」する客観的で合理的な理由(要因)があるならば、住民の皆さんのご意見を伺い検討することはやぶさかではありません。しかし、事業者においては、財産権や営業の自由といった憲法上・私法上の権利を有するものであり、これと住民の太陽光発電事業に対する様々な権利(防災や景観など)との調整を考える必要があります。
 最初から開発をストップさせると決めつけた方策をとることが出来ない点はご理解下さい。
 

(3)太陽光発電の規制強化、条例の改訂について 

 トラブルを未然に防ぐ目的で令和元年10月に町独自の条例制定を行いました。この条例では、説明会等による対話を事業者に義務付け、相互理解を醸成し地域と共生する事業となるよう促しております。全国的に見てもかなり厳しい規制を敷いていると認識しております。施行後2年ほどが経過しましたが、一定の効果が生じていると考えております。
 今後はより公平・公正な審査を行うため、条例改正等については研究しているところです。
  

(4)環境に配慮した再生可能エネルギーの推進について

 現時点で具体的な政策はございません。
 しかし、自然環境を生かした再生可能エネルギーは、社会を継続的に維持し発展させていくためになくてはならないものと認識しています。
 また、長野県において、地球温暖化対策及び環境エネルギー政策を推進するための計画「長野県ゼロカーボン戦略~2050 ゼロカーボン実現を目指した2030年度までのアクション~」が今年6月に策定されたことから、富士見町においても行動計画を共有しながら進めてまいります。
 

中島えり候補の回答

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 中島恵理公式ホームページ

 

(1)反対署名、区決議の重みと役割について 

 太陽光発電等地域の開発事業を行うにあたっては、地域住民の安全安心な暮らしや景観、環境保全を図ることが必要不可欠であります。
 
 富士見町太陽光発電設備の設置及び維持管理に関する条例(以下「条例」という。)の前文において、「太陽光発電設備が、富士見町の景観や自然環境と調和し、適正に設置・維持管理されることが町民の安全安心な生活の確保と地域との共生を図る上で非常に重要になってきている」と規定されています。また、条例第8条第2項において、事業者は周辺住民及び関係区の理解が得られるよう努めなければならないこと、条例第9条第1項では町長は、第8条の規定が遵守されたと認めるときでなければ、許可をしてはならないと規定されています。
 
 これらの条例の規定を鑑みても、メガソーラー事業に対する反対署名、区決議の重みは非常に大きいと考えております。特に近年の気候変動に伴い、これまでに経験のない強い暴風雨が今後生じる可能性、町の貴重な自然環境が一旦破壊されれば回復することは困難であることも鑑み、富士見町住民の皆さまの意見や懸念の声に最大限寄り添いながら、町としての適切な対応を行っていくことが必要です。すなわち、メガソーラー事業により、災害防止等の安全安心な生活の確保、景観、自然環境保全地域の貴重な歴史的・文化資源が損なわれることのないよう、町としての対応を行っていく必要不可欠であると考えております
 

(2)太陽光発電計画に住民が反対するとき、開発をストップさせる方策について 

 
 条例第6条に基づく町長への事前協議及び第9条に基づく許可手続きにあたり、住民のみなさまの懸念事項への対応及び設置基準等の許可の基準への適合性を科学的な知見を踏まえて検討するため、環境保全や災害防止等に関する専門家の参画を得た公開の委員会を設置する(事業区域が2000平方メートル以上の場合は富士見町環境保全審議会への助言を行う組織として位置付ける)ことが必要だと考えています。
 
 この委員会を通じ、事業者に対して、住民のみなさまの懸念事項や土砂災害防止等住民の安全安心な暮らしを担保する観点から、科学的根拠に基づく調査や説明を求めていくことが考えられます。
(なお、過去に霧ヶ峰に計画された大規模メガソーラー事業について、県の環境アセスメントの一環として、公開の長野県環境影響評価技術委員会で、事業者に対して技術的、科学的な調査や説明を求めながら、メガソーラーに伴う環境影響について審議がされていました。その途中段階で事業者側の判断により、撤退が決まっています。)
 
 また、国においては、「地域自然資産区域における自然環境の保全及び持続可能な利用の推進に関する法律」が定められています。これは地域における大切な自然環境の保全及び持続可能な利用を推進するため、一般社団法人等又は都道府県、市町村が寄付を募って土地を取得すること(トラスト活動)を推進する法律です。この法律の趣旨を鑑みれば、富士見町の住民の皆さまのご意見、ご要望を踏まえ、富士見町における重要な自然環境や文化的・歴史的資源等を保全し、災害のない安全安心な生活を確保していくためのトラスト活動を検討していく方策もありうると考えております。
 

(3)太陽光発電の規制強化、条例の改訂について 

 富士見町で相次ぐメガソーラー開発の現状を踏まえ、自然環境保全、災害防止と再生可能エネルギー事業に伴う土地の利活用とのバランスを図っていくことが重要です。
 今回の現状に鑑み、土砂災害の防止、自然環境、文化資源保全等の観点から、森林伐採等を一定規模以上で行う太陽光発電事業等に対し、住民の皆さまの懸念に対応する規制の充実が必要であると考えています。現段階で想定される取組例を以下列挙いたします。
 
 一方で、これらの課題の背景には、高齢化等により所有者や集落における農地や森林の維持管理等が困難になっていることが挙げられます。このような農地や森林の維持管理や農林業を後継していく支援の仕組みを早急に作っていくことが求められます。
 

○富士見町太陽光発電設備の設置及び維持管理に関する条例の改正
①太陽光発電禁止区域の拡大及び抑制区域の設定

 太陽光発電事業(特に森林伐採や一定の土地改変を伴う事業)について、災害防止の観点、環境・景観保全の観点、文化・歴史保全の観点から、現行の土砂災害特別警戒区域、急傾斜地崩壊危険区域以外の場所を禁止区域及び抑制区域として拡大することが考えられます。
 
 例えば、以下のような視点が考えられます。
・災害防止の観点:土砂災害特別警戒区域、地すべり防止区域、砂防指定地及びこれらの地域の上部地域、その他地形、地質上土砂災害の可能性が高い地域等
・環境・景観保全の観点:貴重な動植物の生息地域、湧水・水源地、優れた景観等を有するエリア
・文化・歴史保全の観点:富士見町の文化、歴史を維持保全する観点から重要な地域
 

②設置基準等許可基準の見直し

 近年の気候変動の状況、土砂災害等の災害防止、自然環境及び文化的・歴史的資源保全の観点から、より詳細な許可基準を追加。
 

③一定規模以上のメガソーラー事業について、事業者側に環境・社会影響評価の義務付け

長野県環境影響評価のアセスメント条例の対象となるのは50ヘクタール(森林の区域等は20ヘクタール)以上の事業であること、また、今後は、環境影響だけでなく、災害防止や文化・歴史的資源の保全等も考慮していく必要があります。そこで周辺環境に大きな影響を与える一定規模以上の事業に対して、町独自の仕組みとして事業の計画段階からの環境・社会配慮及び影響評価の義務付け及び技術委員会を通じた審議、公開による影響評価プロセス及び住民参加の仕組みを検討していくことが求められます。
 

④事業者から説明対象となる周辺住民、関係区の範囲の拡大

 条例では、事業者から説明対象となる周辺住民は「事業区域の境界から50メートル」、関係区は「事業区域の境界から100メートル」と規定されていますが、例えば原村の条例では、境界から400メートル以内が対象とされています。土砂災害や水環境保全等を考慮した場合には、距離だけでなく、当該地域の流域や利水地域を考慮した範囲設定も求められます。
 

○富士見町環境保全条例の運用の見直し及び必要な罰則規定の追加
~土地取引が行われる前に町が適切な対応をとる運用に~

 
 富士見町環境保全条例第26条は、3000m2以上の一団の土地について開発しようとする事業者は、土地の所有権、土地を利用する権利を取得する契約の締結前に、あらかじめ町長と協議することが義務付けられており、さらに、町長が特に必要と認めるものについては審議会の意見を聞くものとされています。
 
 ご指摘の町内の太陽光発電の事業計画にあたって、この条文に基づく事業者の協議状況及び、町がどのように協議、判断したのか、さらには、審議会の意見を聞いたのかどうか、富士見町から住民が納得できる説明がなされていないと理解しております。
 
 この条文を富士見町が適切に運用していれば、太陽光発電事業者に土地の所有権が移る前に、住民の懸念に対応できた可能性があります。
今後は、例えば、不動産事業者とも連携し、第26条に基づく事業者による契約締結前の協議を促すとともに、第26条の規定遵守を条例第23条の許可基準にいれるなど、この条文の運用の適正化と規定の充実を図ることが求められます。
 

(4)環境に配慮した再生可能エネルギーの推進について

 環境に配慮した再生可能エネルギーとしては、住宅や建築物への太陽光発電の設置、災害防止、自然環境・景観保全上支障のない場所での太陽光発電の設置、農業用水路等の小水力発電(減水区間が生じる場合はそれに伴う環境影響を確認する必要あり)、里山の適切な管理による薪、チップ等を通じた小規模のバイオマスエネルギー利用が考えられます。
 
 富士見町内の住宅や建築物への太陽光発電の適正については長野県の信州屋根ソーラーポテンシャルマップにより把握できます。環境省が公表している再生可能エネルギー情報提供システム(REPOS)を活用することにより、富士見町での再生可能エネルギー事業の導入ポテンシャル情報に加え、景観、文化財、鳥獣保護区等の配慮すべき地域・環境情報及びハザードマップ等の防災情報も併せて確認することができます。これらの情報を地域の事業者に伝えながら、環境に配慮した再生可能エネルギーの普及を進めていくことが重要です。
 
 また、環境保全型の再生可能エネルギー事業を通じて地域内の経済循環を生み出し、社会課題解決に貢献する地域エネルギー会社の立ち上げの支援も行いたいと考えております。地域の事業者の参画を得た地域エネルギー会社が、例えば、住宅や建築物への太陽光発電等の再生可能エネルギー設備の導入を第3者設置方式で導入を行うことで、住宅や建築物の所有者は、初期投資ゼロで太陽光発電設備を導入でき、災害時に必要な電気を賄うことができる取組を進めていくことが考えられます。このような環境保全型でかつ地域の経済活動にメリットを生じさせるような事業の立ち上げを、今年度から新たに導入された地域エネルギー会社への国の補助金も活用しながら支援していくことを考えています。